DAY3

DAY3·淘汰

Soho
翌朝、Aya が目覚めて部屋から出ると、外でうたた寝をしている前田を発見した。Aya に気遣って外で寝てたらしい。
と、ダニエルもパトカーに乗ってやってきた。ダニエルは、ガラすきのニューヨークは渋滞なしで、快適だ、と言う。
2人とも、Aya を元気づけようとしているのだろう。それを感じた Aya は言う言葉が見つからなかった。
ダニエルは、つとめて明るく振る舞っている。あげくの果てには、向こうにガンショップがあるから、物質補給に行こう、なんて言い出す始末だ。
前田まで、そういえば向こうにドラッグストアもあった、なんて言い出す。2人とも乗り気なので、仕方なく(?)Aya も行くことにした。
ドラッグストアの扉は壊されていた。前田は、さすが科学者なのか、ドラッグストアに入ったとたん、生き生きとしだした。
ガンショップの前に行くと、逆に前田はおどおどしている。日本人の前田には、店で銃を売っている、ということに慣れていないのだ。
店には鍵がかかっていた。どうしようかと思っていると、いきなりダニエルが銃を撃ち、店の扉を割ってしまった。
それを見て、本当にダニエルは警官なのか、という前田の問いに、Aya は笑って「たぶんね。」と答えた。
どうやら、だんだん元気になってきたらしい。
物質の補給も終わった3人は、とりあえず17分署に帰ることにした。

Museum
17分署に帰ってきた Aya たち。
しかし、事件の方に進展はない。
仕方がないので、ちょっと出かけることにした。
どこに行こうかと考えていたら、前田が「研究設備のあるところに行ってくれませんか」と言い出した。何か試したいことがあるのだと言う。
研究設備…というと、クランプ博士の研究室か。あまりいい人じゃないみたいだけど、クランプ博士も避難しているだろう。
クランプ博士の研究室につくと、前田はさっさく、その「試したい」ことを始めた。
ダニエルが何をやるつもりなのか聞くと、前田は Aya の服にゲル状のものが付着していたと言う。つまり、 Eve の細胞片が。それを電子顕微鏡で見てみようというわけだ。
そして、前田はいきなり自分の腕を傷つけた。2人がびっくりしていると、「ちょっと実験してみようと思いまして。」と言う。
2人がそっと見守っていると、前田は電子顕微鏡をいじりはじめた。
細胞のなかをどんどん細かく見ていく。すると、ヒトデみたいな形をしたものが、いくつも出てきて、核を取り込んでしまった!!
驚くべき光景だった。Aya も今見たものが信じられない様だった。
前田は静かに説明を始めた。ミトコンドリア、すなわち Eve が細胞の核にとりついて、完璧に支配している。動物達も、同様にしてコントロールを奪われてしまったのだろうと。
しかし、さっきの光景を見たとは言え、すぐには信じることはできないのだろう。ダニエルが、本当にミトコンドリアにそんな力があるのか、と聞いてきた。
前田が更に答えた。
「普通のミトコンドリアにはそんな能力は、ないはずです。しかし、Eve のミトコンドリアははるかに進歩しています。
そうですね…。あえて推測するならば…。
…通常のミトコンドリアは ATP というエネルギーを生産する時酸素を必要とします。その際、ミトコンドリアは、核にその酸素を要求するんです。核は、ミトコンドリアからのエネルギーの供給がないと活動できません。だから、ミトコンドリアの要求には逆らえないんですね。 Eve は、おそらく、その共生関係を逆転させる能力を…進化、あるいは変異によって身につけたのではないでしょうか?」
共生関係を逆転?本当にそんなことが可能なのだろうか。ダニエルがその疑問を口に出すと、さらに前田が続けた。前田が言うには、これだけの細胞片でこのパワーなのだから、 Eve 本体の力はどれほどになるか検討もつかないと。ただ一つ言えることは、日本での Eve よりはるかに上回る力を持っているだろうとうことだった。
そこまで前田が話した時、Aya が「私のも試して欲しい。」と言い出した。
前田がとまどっていると、Aya は「なぜ私だけ発火しないのか、Eve と戦う力があるのか、知りたい。」と言った。さらに、「私と Eve の関係は何なのか、知りたい。」とも言った。
Aya があまりに熱心に頼むので、とうとう前田も折れてしまった。
さっき前田がやったように、Aya も自分の腕の細胞を採取して、Eve の細胞の中に入れ、顕微鏡で覗いた。
しばらく、前田が覗いていたが、やがてびっくりしたように立ち上がった。
「自分で見て…確かめてください。」
なんだろう、と思いながら Aya は顕微鏡を覗いた。
先ほどの前田の時と同じように見えた。ただひとつ、違ったことは、Aya の細胞の核に取り込もうとしたミトコンドリアを、Aya の核は拒絶したことだった…。
前田は、「Aya のミトコンドリアは細胞の核にさらにエネルギーを与えている」と説明した。そう、まるで Eve のミトコンドリアから核を守っているかの様に…。
なぜ、Aya のミトコンドリアにそんな力があるのか?それは分からないが、リチャード?ドーキンスの提唱した「遺伝子は、自分の子孫を多く残すことのみを考える」と言う考えによれば、 Eve が自分以外のミトコンドリアを滅ぼそうとしているのに対して、Aya のミトコンドリアは対抗するのに目覚めたという考え方もできるのだそうだ。
だが、そう言う考え方ができたとしても、なぜ Aya にだけそんな力があって、他の人にはないのか…。それは前田にも分からなかった。
と、そこまで話した時、いきなり物音が聞こえた。Aya とダニエルがあわてて構えると、物音はクランプ博士だった。
「…私の研究室で何をしている。」
相変わらず無愛想な声で博士がたずねる。しかし、そんな他人に言えるわけもない。ダニエルがくちごもっていると、Aya が「避難命令が出ているので、博士も避難した方がいい」と博士に説明した。
しかし、博士は勝手に入ったことをかなり怒っている様子だった。前田が謝ろうとしたが、博士のあまりの剣幕にたじたじだ。
そのうち、博士は顕微鏡を使っていたことに気づき、顕微鏡を覗いてしまった。もちろんびっくりする博士。この細胞をどこに手に入れたのか、と聞かれ、前田は「言えません」と答えたが、クランプ博士は真っ直ぐに Aya の方を向き、
「そうか、それで Eve の細胞に取り込まれないのか。」
と言った。こんなことまで知っているとは、クランプ博士は何ものなのか?
しかし、考える暇もなく、クランプ博士は質問してきた。
「本人の体調に変化はないのか?」と。
クランプ博士に言わせれば、細胞に過剰なエネルギーが供給されているので、体が熱っぽく、意識がしっかり保てなくなるらしい。
と、その時、博士の机の上のパソコンの画面を見たダニエルがいきなり声を上げた。パソコンの画面にはベンとロレーンの名前があったのだ!
ダニエルが騒ぎ立てると、クランプ博士はディスプレイのスイッチを切ってしまった。もちろん、ダニエルも黙ってはいない。今のリストの説明を求めるが、クランプ博士は「答える義務はない」と取りあってくれない。
Aya に落ち着くようにいわれ、やり場のない怒りに体を震わせるダニエル。そんなダニエルを横目に、クランプ博士は出て行くように命じた…。
Aya たちが出ていった後、クランプ博士はこういった。
「だが…、何を知ったところでもはや手後れだ。」と。

N.Y.P.D.
17分署に向かう車の中。クランプ博士にあの名前のリストのことをきちんと問いただせなかったダニエルは悔しがっていた。
前田によると、あのリストは HLA 型という臓器移植などの適応を判断するための型が近い人達のリストらしい。
ダニエルはよっぽど悔しかったのだろう、クランプ博士の素性を洗ってやると息巻いていた。
しかし、Aya 達が17分署に帰ると、そこは荒れ果てていた。どうしたのだろうと考えているうちに、Aya は Eve の気配を感じた。どうやら、これは Eve の仕業らしい。
中にはベンがいる。これ以上家族を失うのはまっぴらだと、ダニエルは Aya が止めるのも聞かず、署内に走っていってしまった。
Aya も署内に入った。中は、負傷した人がたくさん倒れていた。そして、予想していたことだが、敵もたくさんいた。
念のため、地下から調べていくことにした。地下には、武器管理部がある。何か手に入るかもしれない。
しかし、武器管理部で Aya が見たものは、倒れているトーレス主任と、付き添っているウェインだった。
娘が銃で殺されたトーレスは、とっさに銃を撃つことができなかったのだ。
銃は、悪くない、使う人間次第だ…。
これがトーレスの最後の言葉だった。
M92F。トーレスの武器だ。これを、ウェインが渡してくれた。そうだ、これでトーレスの仇を討たなくては!
Aya はいままで行ったことのない 2 階を目指して走り出した。
2 階はいつも見張りがいて通してくれなかった。しかし、今は鉄格子は壊され、その見張りが倒れている。
ベンはこの上にいる。急がなくては。
Aya が先を急いでいるころ、ベンは Eve のせいでおかしくなったシーバを追いかけて、上へ上へと進んでいた。そして、その後ろを化け物が敵が追いかけていた…。
ベンがシーバに追いついた時、シーバは苦しみはじめた。変化が始まったのだ。
その時、ベイカーがベンに駆け寄り、抱えて逃げ出した。何も知らないベンは暴れるばかり。
見る見るうちに、シーバの肉体は膨れ上がり、見るのも無残な姿になった。
そんなシーバを見たベイカーは、化け物になるくらいなら、と銃をシーバに向けた。しかし、弾が切れてしまい、ベンは恐怖の叫び声を挙げた。
そのとき、トーレスの仇を取り、近くまで来ていた Aya が部屋に飛び込んだ。ベイカーが傷を負っている。ベンをかばったのだろう。ベンが叫ぶ。
「シーバを眠らせてあげて!」
と。
とても、目の前のものがあのシーバとは思えなかった。しかし、こいつがベイカーを傷付けたのは確か。Aya は静かにシーバの化け物に銃を向けた。
シーバの化け物は強かった。衝撃波を使ってくるので、何度もヒールを使って Aya は確実に化け物の体力を奪っていった。
そうやって、何度も繰り返した後、やっと倒すことができた。
その時、ダニエルがやってきた。ベンの姿をみて安心した様子だ。しかし、その代わりにベイカーが怪我をしてしまった。謝るダニエル。
そんな時、ベンが
「シーバの仇を取って。」
と、Aya に言った。。。

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